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「窓が包む世界」投稿こだま

藝大美術館

「窓が包む世界」のワークショップに参加した方から送られてきた、窓の写真のデータと、窓の紹介や開け閉めするときのことなどを書いたテキストを掲載していきます。

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朝、窓のカーテンをちょっと開けると、電線の近くに鳥の影があることがあります。新しい日の、小さな鳥との、少しだけのつながり。
いつもいるわけではない、いてもすぐに飛び立ってしまう、でも、それを毎日探してしまう。
朝の小さな贈りもの。

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冬の日の朝、必ず窓から雪が降っているか、どれくらい雪が積もっているかを確認します。吹雪いていると真っ白で何も見えない時もあるし、ふわふわと雪が舞うように降っているときもあるし、雪が積もって朝陽が輝いてまぶしい朝もある。一年の朝の中で一番、季節を感じる瞬間かもしれない。今度は冬に写真を撮ってみよう。

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夜寝る前に閉めて、毎朝開ける寝室のカーテン。
重い遮光カーテンを開ける行為は、私の手で夜が明けていくような感覚があります。
今日はどんな日が待っているんだろう?と思いながら開けるその先にもたくさんの家の窓があって、私と同じように自分の手で朝を明けている人がたくさんいるんだろうな、なんて思うこともあります。

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-ねえねえ、おなかすいた
ーおなかすいたよ、まだ?
ーまだ?まだ?
ーじかんですよ~、おばあちゃ~ん!

今日も姦しい(けれど決して慣れない)雀たち。
動くと逃げる。停まり損なって躓く。餌を取り合って喧嘩。たまに勢い余ってガラスに激突。騒々しいことこの上ない。
しかし、そのこけつまろびつの騒動ぶりがなんとも憎めない。

母は「うるさい!」と口では文句を言いながら、時間になると窓を開けて餌をやっている。
小雀もずいぶん大きくなって、一時は30羽以上いた雀の群れもすこし小さくなったような気がする。

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我が家の中心にあるはきだし窓。分厚い生垣越しに、工事現場が見える。公園ができるらしいが、できる頃にはきっと引っ越しているだろう。窓から見える庭は乾燥しやすく、蚊が多く、すぐぬかるむ。けれども、四季折々、いろいろな花が咲いているのが見えるし、レモンの木やフェンネルにはアゲハ蝶がやってくる。ずっと先に、大人になった坊やはこの窓から見えた景色を思い出すだろうか。巨大なクレーンと真っ赤なセンニチコウが共演するまたとない窓のことを。

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家の北側にある普段あまり使っていない部屋の窓。
面した家々の彩りが晴れた日には特に綺麗で好きです。

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窓を選んでから、一日の終わりには「東京タワー、つーかまえた!」と言って窓を閉め、毎日の始まりには、街はどんなかなぁ?などと思いながら窓を開けています。この窓から見える朝焼けの街も、近くの公園からこどもたちの声が聞こえてくる夕方も、花火が上がる夏の夜も好きです。今夜は月が出ました。そっと撮ってお伝えします。

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こどものころ、この窓から、よく逃げ出しました。
ピアノのお稽古の前に、あるいは宿題をしているはずなのに。
今、窓は母の庭をやさしく包んでいます。

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